Vol.4 長久保 華子 -Drowing-

コラム


AISで主に紹介している東京藝術大学(藝大)美術学部や美大や美術の学校では、ほとんどの学部でデッサンを入学前にしっかりと学ぶ。石膏や静物、人物、動物、風景等、様々なデッサンを学び習得している。デッサンを通して物をとらえる力を訓練している。

近年ではパソコンで誰でも簡単に3DCGを制作することができる。
立体作品の制作を目指す作家であれば、デッサンを描く際にCGと同様のプロセスを頭の中で行っている事が多い。

描画対象物をあらゆる角度から観察し、立体的な構造をインプットする。その情報を頭の中で再構築し、光源を設定しながら影の付き方をイメージし描画する。もちろん表面の質感も合わせて頭で再現しながら描く。

一見真っ白い石膏デッサンの場合でも石膏に汚れがあり、形状の起伏なのか汚れなのか訓練しないと判断がむつかしいことがある。また、室内の蛍光灯の下に置かれた石膏は光を均等に浴び、陰影が付きにくい。そのまま描いても絵にならない。デッサンではそれらの光を整理し、最も美しく形を表現すために最適な光を設定し再構成しながら描く。

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それらの訓練を1年から数年間予備校等で学び、試験を経て入学しているため、ある一定レベルを越えたデッサン力を有する。その力は抽象的な作品や現代美術のような作品においても作品の根底に、DNAとなって存在し、オーディエンスへ伝える力を放っている。それを科学的に説明することは難しいが筆者はそう信じている。

先日足を運んだ卒業展で一際目を引いたのが長久保 華子の作品。
東京都美術館の展示空間の中に凛とした佇まいで周りの空気とは異質な空間を創出していた。美しいフォルム、デフォルメされた形。流れる曲線。力強い目。

力強い立体作品は作品を取り巻く空間を作品と同化させる力が強い。イメージ的には星の重力の影響範囲が星の質量に比例するそれに近しい。その作品が支配する重力内に入ると他の作品が視界から消える。

重力圏に入り込んだ筆者は作品に引き寄せられるように歩み寄った。近距離で観察しても作品の完成度は依然保たれ、むしろディティールがしっかりと創りこまれているがゆえに迫力を増した。凛としたその姿から作者の内なる力を感じた。長時間の作品鑑賞後重力から解かれるように過去の作品やDrowingが紹介されているポートレートファイルをめくった。

ファイルには、その作品が見事に描かれている。凛とした姿。美しい曲線。鋭い眼光。すべてが表現されているそのDrowingから改めて作者の力量を確認した。

このように拙い言葉でいくら表しても伝わらないであろうことは分かっており、作者に特別にDrowing画像をご提供頂いた。

普段これらのDrowingは制作プロセスの一つに過ぎず作品ではない。作者もその意味から基本Drowingを提供することは無いと言う。筆者もその意見に賛成だが、今回は是非AISのオーディエンスの皆様に長久保 華子のドローイングの素晴らしさをご紹介したくご提供頂いた。

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AISでは今後も東京藝術大学及びそれらの方と一緒に活動しているアーティストやそれらの方から推薦されたアーティストを紹介し続けるが、一つだけポリシーがある。
それは基礎力である。
しっかりと基礎を学び揺るぎない力を習得したアーティストの情報を提供することで、オーディエンスに安心してご覧いただけるようにしたい。
アート。特に抽象的なクリエーティブ、コンセプシャルなクリエーティブは一般のオーディエンスには良否の判断がしにくいのも否めない。そんなオーディエンスの方にも安心して作品をご覧いただけるよう努めたい。

長久保 華子 作家紹介

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